第10回 一休み  「つめた貝」 ‐ 《Moon Shell》

 

《Moon Shell》 *1
  
   
《Moon Shell》、「つめた貝」。
 
吉田健一訳の『海からの贈物』ではその姿はこのように描かれている。 

乳白色をしていて、それが雨が降りそうな夏の晩の空と同じ薄い桃色を帯びている。そしてその滑らかな表面に刻み付けられた線は貝殻のやっと見えるぐらいの中心、眼ならば瞳孔に相当する黒い、小さな頂点に向かって完全な螺旋を描いている。(p.37)


この章で描かれているイメージが幾つかある。
海に浮かぶ島と空に浮かぶ月。それから水を湛えた泉と満たされた杯。
月と島は自分一人でいることを、そして泉と杯は自らが満たされていることを象徴している。
 
 
 

*1:写真はSeashellGuide.com http://www.mitchellspublications.com/guides/shells/articles/0042/より。 《Moon Shell》 の一種である、 Shark's Eye あるいは Atlantic Moon Snail とも呼ばれる貝のようだ。