補遺

 補遺1 落合訳らしさ

[まえがき] の訳文にはさほど大きな問題はないとも言えるので取上げないつもりでいたが、あらためて一冊全体の中で見るとやはりいかにもこの訳者らしい翻訳ぶりであるので、これらもやはり指摘しておくことにする。 落合恵子訳はこのようになっている。 「考…

 補遺2 宗教的な言葉を除外する

これも間違いというのとはまた少し違うが、落合の翻訳は著者の志向と隔たりが大きいというかむしろ正反対であるので、やはり指摘しておくことにする。落合恵子訳は以下の通り。 落合ははっきりと、宗教的な意味なのではない、と完全な否定で訳している。 「…

 補遺3 文脈を考えずに間違った翻訳をする

以下は落合恵子の訳。文脈がちゃんと読めていないからこんな訳になってしまう。 「たいていの人たちは、中年と呼ばれる年代になる前に、社会で自分の椅子を獲得しようとするか、その闘いをやめてしまうかのどちらかである。そうなると、暮らしとか家とか、さ…

 補遺4 「不変」と「不動」の大きな違い

この「不変」という訳語の選択一つから落合恵子が Gift from the Sea をろくに読んでいないということがよくわかる。 「宗教的な意味における不変は、わたしたちにとって不可能に近く、しかしわたしたちにこそ、必要なものであるのだ。」(p.25) 同じ箇所を吉…

 補遺5 《mind》を「頭」と訳す吉田健一訳『海からの贈物』の質の高さ そして落合恵子の愚かさ

ことさらに吉田健一の翻訳を称揚するつもりもないのだが、原文と照らし合わせながら吉田健一の訳文と落合恵子の身勝手で程度の低い訳文を比較してつぶさに読んでいくと、やはり両者の翻訳には歴然としたレベルの違いがあるということ、そして何よりそもそも…