一休み 貝の話

 第5回 一休み  「にし貝」 ‐ 《Channeled Whelk》

旧版の新潮文庫の『海からの贈物』は表紙のデザインが全く抽象的なものであったし、また文章からも、著者を思索へと導いた貝が実際どのような姿であったのか、その具体的なイメージを得るまでには至らなかった。 現在の新潮文庫の表紙は写実的な貝のイラスト…

 第7回 一休み  「やどかり」 が意味するもの

にし貝の章の冒頭で、かつて 「やどかり」 がこの貝殻を住処にしていたのだと語られている。Gift from the Sea では貝殻が著者の思索の端緒となっているのだが、その姿形ばかりでなく、《Moon Shell》 や 《Argonauta》 のように貝の呼び名もまた著者に大き…

 第10回 一休み  「つめた貝」 ‐ 《Moon Shell》

《Moon Shell》 *1 《Moon Shell》、「つめた貝」。 吉田健一訳の『海からの贈物』ではその姿はこのように描かれている。 乳白色をしていて、それが雨が降りそうな夏の晩の空と同じ薄い桃色を帯びている。そしてその滑らかな表面に刻み付けられた線は貝殻の…

 第14回 一休み  「ひので貝」 ‐ 《Sunrise Tellin》

「ひので貝」 の章の原文表題は 《Double-Sunrise》 なのだが、本文中では単に 《sunrise shell》 と表記されていることの方が多い。 しかし、 《double-sunrise》 で検索しても何も見つからず、《sunrise shell》 で検索すると本文中の描写とは大きく異なる…

 第17回 一休み  「あおい貝」 と 「たこぶね」 ‐ 《Argonauta》

《Argonauta argo》 「あおい貝」*1 《Argonauta hians》 「たこぶね」*2 二つの翻訳どちらでもそのことは書かれていないが、《Argonauta》 は実は貝の仲間ではなく蛸の一種で、貝殻のように見える物はその雌が自身の周囲に形成する薄い外殻である。*3 《Pap…

 第21回 一休み   その他の貝など

吉田健一訳『海からの贈物』より。 ここの浅瀬の温かい水の中を渡って行くと、大袖貝の群れが片足で立ち、かしぱんが泥に幾つも嵌め込んだ大理石の賞牌のように横たわり、無数の極彩色のおおのがいが水の中で光って、蝶の羽も同様に開いたり、締まったりして…